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インタビュー 2025.11.5

TEXT:木田 正人  Photo 金久保誠

自分の頭で考えて行動する〜北極冒険家・荻田泰永さんに聞く⑥

荻田泰永さんのプロフィールを見る

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2000年以降、毎年のように極地を旅してきた荻田さん。2012年に、新たな旅である「100マイルアドベンチャー」を始めます。小学6年生を対象に国内を100マイル、キャンプしながら歩く旅です。

荻田:よくこういうインタビューで、生き方に悩んでる、動き方がわからない若者たちに、何かアドバイスありますかと聞かれるんです。

青木:どう答えるんですか?

荻田:いや、別にないですねって。要は動く必要がないから動いてないんでしょうと。
例えば、目の前にライオンがね、口開けて走ってきたら、あ、食われる、やばいと思ったら逃げるじゃないですか。逃げてないってことは、まだだいぶライオンが遠いんですよ。

本当に必要に迫られれば逃げるし、反射的にね、何か動く、動かざるをえないんです。

だから、別に動いてない人を無理やり首根っこ掴んで動かす必要ないし、本人が動かざるをえなくなったら動くし、ほっといても動かないんだったら、 別に他人が動かす必要もないんじゃないですかっていうね。そんな感じですね。

青木:なるほど…


荻田:自分の場合は大場さんのテレビを見た時は切羽詰まってたっていうか、ライオンが目の前まで来てるような感じなんです。もう、動かないとどうしようもないんだけど、でも、どっちに走ったらいいか分かんないっていうね。

で、何か自分にヒントがほしいから、アンテナも一生懸命張ってた。そういう時に、大場さんがピピッと引っかかったんですね。もしあの時、自分がアンテナをパタンと閉じてたら、そう、テレビ見てもチャンネル変えてたかもしれないし…。やはり切羽詰まってたから、アンテナをものすごい広げてたんで、だからこそ引っかかりましたね。

青木:ちなみに、今後はどこか行かれるんですか?


荻田:極地に関しては具体的な計画はないですけど、そろそろ、考えたいなっていうね。また若い子たちを連れて何かやりたいし、北極はもちろん、南極ももう1回行きたいなとか。いろいろ考えてるところですね。

青木:若い人を連れて行くのはいつから始めたんですか?

荻田:4年前、40歳過ぎたくらいで始めました。なんていうか、40歳を過ぎてくるとやりたくなるんですよ。 それまで自分のことしかやってなかったくせに、子どもたちとなんかやるとか、自分の経験を伝えるとか…。

そういう人多いじゃないですか。これ、なんでだと思います?

青木:なんでですかね…


荻田:そう、もう遺伝子レベルで、多分そういう感覚があって、人は40歳ぐらいになってくると経験も豊富だし、死ぬ前に若い子たちに、自分の経験や知識を伝えるんですよ。人類そうやってずっと何万年、何十万年、何百万年と生きてきてるんですよね。

青木:書店を開いたのも40歳過ぎくらいですか?


荻田:えっと、43歳ですね、はい、やっぱ、これも関係ありますよね。人間ね、そういう生き物なんですよ。


青木:なんかね、あれなんですかね、40歳を過ぎると何となくスピード感が落ちてくるところがあって、そうした時に、自分がもうできないものが見えてくる年齢なんですかね。


荻田:肉体的な衰えもありますからね。

青木:ありますからね。そうすると、じゃあ次のこの欲求を若い子に繋げるという感じなんですよね。今、話し聞いてて思いました。


荻田:そうですね、今の40歳は元気ですけど、多分、昔はもっとね…

青木:スイッチのオンオフの話に戻りますが、めっちゃ大事ですよね。自分の頭で考えて行動することが、ほんと大事。

そのスイッチを錆びさせないように、社会システムに依存して、誰かが考えてくれるのを待つのではなく、自分で考えなきゃいけないってことですね。

荻田:私、本屋をやってますが、冒険をすることも、本を読むことも、自分の頭で考えながら行動するという点でまったく同じことなんですよ。 まずは自分の頭で考えるという経験を重ねることで錆は落ちていくはずです。

(インタビュー収録:2023年5月)


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TEXT:木田 正人  Photo 金久保誠

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