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インタビュー 2024.10.9

TEXT:maya  Photo 木田正人

自然と人が共に生きる「御岳」で、商品と想いを届ける

遠藤 浩史さんのプロフィールを見る

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アウトドアが盛んな地域・御岳にある、中古アウトドア用品店「マウンガ」。 今回お話を伺ったのは、創業者の1人であり、人々のアウトドアスポーツライフを支え続ける遠藤さん。仕事につながるきっかけと、自然に対して考えていることについてお聞きしました。

すぐそばにある自然が魅力。御岳に店をオープン

マウンガについては、こちらの記事もご覧ください

新宿から電車で約1時間半。青梅市・御嶽駅を降りると、霊山として古くから信仰されてきた御岳山をはじめ、秩父多摩甲斐国立公園の雄大な大自然が広がります。御岳渓谷では、河原に点在する岩を登るボルダリングや、カヌーなどのウォータースポーツ、ハイキングなど、自然を楽しむために、多くの人が訪れます。

御嶽駅から徒歩1分ほどのところに、「マウンガ」はあります。

▲思わず中をのぞきたくなる外観の「マウンガ」と、暖かく迎え入れてくれた遠藤さん

お店の中だと少し狭いかも…と、お店近くから御岳渓谷の多摩川沿いへと移動。
巨大な岩が転々と存在し、清らかな川が流れる…
快晴。穏やかな川の流れを聴きながら、和やかな空気で取材がスタート。

阿部:お店を御岳にオープンした理由って何だったんでしょう?

遠藤:シンプルだけど「御岳が好き」っていうところですかね。アウトドアメーカーに勤務をする傍ら、御岳で週末を中心にラフティングガイドの仕事をしに、頻繁に来ていたことが大きなきっかけですね。

阿部:20代の時?

遠藤:20代後半ぐらいですね。その時に「やっぱりここ、すごく良いところだな」っていうのを感じたんですよね。山もあって、川もあって。僕の大好きなアウトドアが全てできる場所っていうのはとても魅力的でした。

阿部:東京で、これだけの自然があるっていうのもすごいですよね。そんな御岳で仕事をしていて、楽しいことって何ですか?

遠藤:ご自身のスタイルでアウトドアを楽しんでる方が、多数お店に来てくださるので、その方々のアウトドアのお話をお聞きできることがとても楽しいですね。

阿部:どんなお話を聞けるんですか?

遠藤:そうですね。アウトドアは、人によって楽しみ方が様々だと思うんですよね。道なき道をゆくバリエーションルートの登山だったり、断崖絶壁を登るロッククライミング、激流を漕ぎ下るカヌー、お酒片手に焚火をしたり、みなさんそれぞれのアウトドアの楽しみ方を登山だったりとか、ロッククライミング、川下りとか。それぞれの楽しみ方をお聞きしています。

幼い頃から自然好きのわんぱく少年

阿部:お生まれはどちらですか?

遠藤:生まれはぼちぼち都会人でして(笑)東京の杉並区なんです。杉並区で生まれ育ったものの、子供の時から、自然を楽しむのが好きな子でした。


生まれも育ちも東京だという遠藤さん。それなのに、自然と小さい頃から関わってきたという背景には、祖父母が住む岩手によく遊びに行っていたという背景がありました。(実は、ライターの阿部も岩手出身!まさかの地元トークに花が咲きました)

遠藤:毎年夏には、祖父母が住んでいた岩手県の盛岡に遊びに行っていたんです。盛岡市内の岩山や北上川といった綺麗な自然の中で遊んでいました。そういう遊びばかり好きだったんですよね。子供の時から。

阿部:何か、自然を好きになったきっかけはあったんですか?

遠藤:中学生の頃は、友達4人と、自転車にキャンプ道具を積み込んで旅に行っていました。「いっちょ山中湖までみんなでチャリ漕いで行くか」みたいなノリで。夜中に杉並を出発して、途中自分達でごはんを作って、テントで寝泊りをしたりして。

阿部:わんぱくだ〜(笑)

遠藤:ついでに僕は、子供の頃からどこでも熟睡ができる性格のようです。原っぱで寝るのはベッドと同じくらい快適でして、あまりに眠い時には、タイヤ止めを枕にコンビニの駐車場で熟睡していたこともありました。コンビニさん、ご迷惑をおかけしてごめんなさい・・・

阿部:中々、そういったことを一緒にやってくれる仲間は簡単に見つからない気がします。

遠藤:当時そういうアホなこと一緒にやっていたのは彼らくらいでしたけどね(笑)親が心配で反対されると言って、賢い仲間の1人がワープロを使って企画書を書いて全員の親に提出したりもしましたね。「何時にはここらへんにいる」みたいな。携帯がなかった時代なので、企画書的なものを作って渡して、なんとか許可をもらったこともありましたね。

阿部:企画書…(笑)説得力がすごい!

遠藤:絶対行きたいっていう強い想いからでした。そんなことばかりしていましたね。


遠藤:そこに豊かな自然があるから、アウトドアって楽しいものだと思うんですよね。山登りをしたり、川下りをしたり、キャンプをしたり。みなさんがアウトドアをする中で豊かな自然の大切さを少しだけでも感じたり、気づいたりすることができれば、豊かな自然が今後も残っていく大きなきっかけにもなりますし、なによりアウトドアがより楽しいものになると思うんですよね。

阿部:確かに。一方で、ちょっと自然に対して偏見があるーーーー例えば、虫が嫌だとか、外は暑いとか、なんか汚いとか、そういうマイナスイメージを持っちゃうと、そもそも来てくれなかったりしませんか?

遠藤:そうですね、それはちょっとあるかもしれませんね。登山へ初めて行く方を一緒にお連れするときは、山を登るっていうだけでで、ちょっとハードなイメージがあるかと思いますので、ちょっぴりワクワクする演出をしています。例えば、絶景の山頂でおいしいコーヒーを入れてみたり、木陰が気持ちよい場所で、ハンモックを張ってみたりとか。

阿部:あ、素敵。

遠藤:秋の紅葉の綺麗な時を狙って連れて行ってみたりとか。山を降りた後は露天風呂から海が見える温泉に行ったり、美味しいご飯を食べに行ったり。そういうワクワクするようなプランを考える。こういうプランも登山の大切な一部だと僕は思うんです。山を登るっていうことだけじゃなく、山の中や自然の中で、自分の好きなものや、心地よい時間、過ごし方を見つけられたら素敵なことですよね。芝生の上に寝そべってコーヒーを飲みながら読書をしてみたり。これもアウトドアだと思います。アウトドアって、身近で気軽なものだと僕は思います。

阿部:なるほど。今のお話を聞いて、遠藤さん自身が小さな頃から色々と、自分で自然を楽しんできた経験があるから、楽しい仕掛けをいっぱい持っているんじゃないかなって思いました。 こうしたらもっと楽しいんじゃないかっていう引き出しがある。

20歳の頃は「人と自然が近い」オーストラリアに居た

阿部:そういえば、遠藤さんはオーストラリアに行っていた期間があるんですよね?

遠藤:そうですね。高校卒業してすぐにワーキングホリデーでオーストラリアに。

阿部:それはなぜですか?

遠藤:それまで僕、海外に1回も行ったことなかったんです。なんなら英語も結構苦手でした。それでも、なぜだかやっぱり「海外行ってみたい」と強く思ったんですよね。

阿部:行って何かしたいというよりは、まず行ってみたいということですね。行ってからは実際にどんなことをしていたんですか?

遠藤:最初はサーフィンをしたり、フラフラとバイトをしたりしていましたが、最終的には、ご縁があってラフティングのガイドの仕事をすることになりました。1年半ぐらいしてましたね。

阿部:「呼吸の時間ですよ」では、毎回20歳の頃何をしていたか、聞いているのですが、まさしく20歳の頃は?

遠藤:はい、オーストラリアにいました。当時ももちろん自然が大好きで、バリバリとラフティングガイドの仕事をしていました。オーストラリアはすごく自然が豊かな国で、人と自然との距離が近い。だから自然に対してよく考えていらっしゃる方が多い印象でした。

阿部:「人と自然が近い」って具体的にどういう感じなんでしょう?

遠藤:まずは、休日の過ごし方。家族や友達とビーチや川、森などに、日本では考えられない程の軽装で気軽に遊びに行きます。泳いだりもしていますが、ビーチの上に敷いたバスタオルの上でのんびりと過ごしている人がいっぱいいます。ビーチサイドには無料で使える電気式BBQコンロが常設してあり、朝早くから盛り上がっている人たちもいましたね。
野生動物に対しても、かわいいからといってエサを与えたりすることはない。エサを与えることでエサに依存してしまった結果生態系へ影響が出ることや、繁殖しすぎてしまって結局捕まえて殺さなくてはいけないという悪循環になることが、オーストラリア人全体に身についているように感じました。

阿部:野生動物に関して、日本だと考え方は人それぞれというところがありますが、オーストラリアでは共通認識としてあるイメージなんですね。

その後、ニュージーランドでラフティングガイド、北海道でもラフティングガイドの仕事をし、東京に戻ってきた遠藤さん。東京でアウトドアメーカーに勤めながら週末に御岳でラフティングガイドの仕事をするうちに「マウンガ」のオープンに至ります。

リスクも知りながら、アウトドアを楽しむ

阿部:遠藤さんは、好奇心の塊のような印象を受けますね。

遠藤:そうですね、やりたいと思ったことは、何を差し置いてもやりたいみたいな。今もそうですね。小さい頃からあんまり変わっていないと思います。

阿部:近年、川や山は危険も伴うので子どもたちもトライする機会が減っているんじゃないかと思うことがあるのですが、それについてはどう思いますか?

遠藤:アウトドアって100パーセントの安全なんて絶対ない。たまたまつまずいて崖から落ちて亡くなってしまうことだってあるし、川で溺れて死んでしまうこともあります。 危険だから行かないというのも1つの選択かもしれないですけど、危険なことをしっかりと認識して、リスクをできるだけ低減させるということが、アウトドアを楽しむために必要だと思うんです。

阿部:リスクを低減する、ですか。

遠藤:イメージしやすい例だと、川遊びをするなら絶対ライフジャケットをつける。それだけで溺れるリスクを低減できる。

阿部:溺れるリスクを考えながら遊ぶ、という経験は子供たちにとっても大切ですよね。

遠藤:そうですね。僕はめちゃくちゃ怖がりなので、リスクばかり考えますよ。登山中も「ここで落ちたら・・・」と考え、できる限りの準備をします。

阿部:おお…。なんかギャップというか。遠藤さん、行動はするけど、リスクをきちんと考えるタイプ。

遠藤:そうですね。断崖絶壁の山や激しい川に来てしまったら、なんでここ来たのかなっていつも後悔します(笑)

阿部:実は、子供の頃からも割とそういうタイプなんですか?

遠藤:いや、子供の頃は一切怖がってなかったですね。 川で、ライフジャケット着けずに流されて大喜びしてましたけど。今考えたら、危ないですよね。山や川についての知識が増えてしまったせいで「怖い」っていう感覚が強くなってしまいました。

阿部:なるほど。その自然の怖いところも含めて、子どもたちにも伝えたいですね。

アウトドアを楽しんでいる人に届け続ける

阿部:これからの事業については、どう考えているんですか?

遠藤:引き続き、このマウンガの仕事はずっと続けていきたいと思っています。

遠藤:僕らが買い取らせていただいたアウトドア用品を、他の方が購入し、少しでも長くその製品を使っていただくことで、自然に対する負荷を軽減することができる。これってアウトドアということだけでなく、人が生きていく上で、とても大切なことだと思うんですよね。

阿部:無駄になる資源が減るということですもんね。

遠藤:仕事を通じて、そんなことも伝えていきたいなと思っています。お近くへお越しの際にいつでもお気軽に店へ遊びにいらしてください!


遠藤さんは、自然の面白さを幼少期から知っているし、オーストラリアでの経験やラフティングガイドの経験、日頃の登山の経験から、自然が時折見せる恐ろしさも身を持って知っていらっしゃいます。まさに「自然と共に生きている人」。そんな遠藤さんがキラキラと語る御岳の自然の魅力・アウトドアの魅力は、妙に説得力を持って私の心に響いていきました。いつもより少し自然を近くに感じてみたいと思ったら御岳、そしてマウンガへ、足を運んでみてはいかがでしょうか。(ライター・阿部 真弥)

TEXT:maya  Photo 木田正人

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