株式会社TATTA(タッタ)代表取締役であり、明治大学、日本大学、日本工業大学、東京電機大学で非常勤講師を務める富永大毅さん。国産材を使う設計を通して日本の山の経済を支え、持続可能な新しい社会の実現に取り組んでいます。今回、取り組みについての想いと、富永さんが今の活動に至る背景、今後の展望についてお聞きしました。
木を通じた創造と社会貢献
寺田:株式会社TATTA(タッタ)代表取締役であり、明治大学、日本大学、日本工業大学、東京電機大学で非常勤講師を務める富永大毅さん。国産材を使う設計を通して日本の山の経済を支え、持続可能な新しい社会の実現に取り組んでいます。今回、取り組みについての想いと、富永さんが今の活動に至る背景、今後の展望についてお聞きしました。まずは、富永さんが代表を務めている株式会社TATTAの活動内容や目的を教えてください。
富永:前職の隈事務所から独立後、普通に設計の仕事をしてい中で、200年前からの択伐を続けていた遂行持続的な森を見て、木無垢材を使用した建築の方針にシフトすべきだと気づきました。設計活動の軸として、そうした無垢材の活用方法を考えていこうと思って法人化したのが TATTA です。日本の国土の七割は森なので、国産の木無垢材を建築物に使用することで、現状補助金で回っている国の森や山にお金が回り、将来にもお金が循環するしていくのではないかと考え、無垢の国産材を使う設計や木材活用に関するコンサル活動をしていますね。
寺田:主に「スギ」を基調とした設計していますが、デザインのポリシーはありま
すか。
富永:木の、こういう使い方があるんだ!と示すことで、もっといろんな人が木を
気軽に使ってくれたらいいなと思って設計しています。スギは色味が赤白
あるので使いにくいのですが、積層することで面白い表現にしたり、あえて、木を限定的に使うことで木を目立たせるデザインを意識したり、普通はやらない木の小口を見せたり、違う種類の木材の組み合わせを探求したりしています。
寺田:このご自宅もご自分で設計されたんですか。
富永:はい。妻の祖母の家をリフォームする形で住んでいます。面積が小さいため仮住まいの予定で、いつもそうなのですが、多摩産の杉材を使い、釘とビスで解体しやすいようにつくりました。天井や床などを一部解体壊して出た木材や現場で出た端材をストックして、家族でBBQをして消費しています。この棚
も将来的には薪になる長さになってます。木を仮止めしてる感じなので、「ウッドストックハウス」という名前がついています。
寺田:このランプシェードもご自分でつくられたのですか。
富永:岡山県真庭市で製品開発を依頼された際に出た材を使っています。真庭市の木の生産比率は、ヒノキ7:杉スギ3なので、それにちなんだ分量で、BeLINというハイブリッドパネルをつくったのですが、このランプシェードはBeLINの端材でつくっています。
寺田:富永さんは4つの大学で授業をされているかと思いますが、どのようなことを
教えていますか。
富永:前期で明治大学と日本大学を、後期で日本工業大学と東京電機大学を非常勤で
教えています。基本的には設計の担当で、15~30人を見ています。建築の設計はもちろ
ん教えているのですが、それを通じて正解のない問いに対して、それぞれがどう取り
組んでいくかを伝えていく感じです。
センスとはリズムである
寺田:ちなみに、富永さんはどういったところから着想を得ていますか。
富永:最近学生にも伝えているのですが、千葉雅也さんが書いた「センスの哲学」と
いう本に共感出来るところがあると思っています。本では、「センス」とは何かを説いているのですが、「センスとはリズムである」と仮定した上でまず決まったビートがあり、それに対してうねりがある。人それぞれのセオリーがあってそれをはみ出すことでデザインができるイメージです。そのビートとうねりのバランスが個性になるという表現がされています。
富永:僕自身は、建築やアートからももちろん着想を得ているのですが、音楽からものを考えることが多いです。例えば、音楽もビートだけではつまらないし、うねりすごててもわかりにくい。どのようにしてビートから外してくるのかを絵として見ています。お笑いを見てもボケからツッコミにこうやどう反転して展開していくんだとか。技術的な更新とは別に、そういったことをで自分なりのセンスを更新していると思います。
寺田:ドイツに留学されていたそうですが、ドイツは森の管理がしっかりされていますよね。選んだきっかけはなんですか?
富永:設計にはじっくり考える能力と、適当にアクションする能力が同時に必要だと
思っているんですが、当時先生に留学を進められた時に気軽に、分かりましたと答えたことでで留学に行くことになってしまいました。大学生の頃は、木材に興味は無かったですが、ドイツでは山にも結構行ったりして、無意識には影響を受けていたように思います。
寺田:他に影響を受けたことはありますか。
富永:働き方の文化に影響を受けました。ドイツは仕事と生活を切り分けない生活が豊かなんですね。ワークアズライフという概念に近い。働くことと休むことは等価だし、子供とどう過ごすかの時間をとてもだいじにしている。日本でもそうしたワークアズライフの概念を発信していきたいと思っています。
富永:自分の働き方については、与えられた課題に真剣に取り組み、自然な流れで不思議な答えが生まれることを期待しています。また、使う人が最も自然な状態でいられる設計ができるように尽力しています。
エリアリノベと無垢材活用
寺田:では、今後の展望や目標を教えてください。
富永:今住んでいる八王子市は空き家が多いので、エリアリノベーションをしたいと
思っています。家づくりにおいては、法改正や物価上昇といったハードルに直面しているので、リビングセンター的な空き家資材を集める場所をつくりつつ、地域の空き家を活用して、畑をつくったり、貨幣経済にによらないお年寄りと子どもたちが元気なエリアづくりを目指しています。また、全国の製材所やディベロッパーとの連携を強化し、木地域の無垢材の活用を推進していくことを目指しています。
TEXT:金久保 誠 金久保誠