中学時代、映画を通じて知った植村直己。アマゾン、グリーンランド、北極と冒険する姿に胸が高鳴り、多少誤解もあったようだが、大人になってもそうやって遊ぶように暮らせる人がいると憧れる。高校生の時、それならと選んだ進学先が、探検部が有名な東京農業大学。自然に関わりたいと農学部林学科を受験する…
植村直己の生き方に憧れ、大学・探検部へ進路を設定
青木:で、その当時は中学生であんまり進路とかも考えてないし、高校も行くのかなみたいな感じでした…
木田:お〜。
青木:親にはたこ焼き職人になるみたいなこと言ったりとかして…。ほかには料理人になりたいとか…。いまだによく言われるんですけど、要は高校行きたくないというようなことを言ってたんですよね。
木田:なるほど…
青木:なんですが、その「植村直己物語」を観た時に、植村さんは明治の山岳部でしたけど、大人になってもこうやって遊んで暮らせる人がいるんだったら、これはいいなって思ってしまったんです。じゃ、大学行ってみたいなと。
木田:はい…
青木:で、その中学生の時だったと思うんですけど、自転車で千葉県1周してみたり…
小学校6年生の時に大阪から移転。それ以来、千葉県で過ごす青木。捨てられていた壊れた自転車を拾ってきて修理しての初めての“冒険”だった。
木田:完全に植村直己の影響…?
青木:そうなんです。自転車であちこち回ったりしてました。筑波山へ自転車で行ったりとか…
木田:植村さんに憧れて、大学に行きたいと。それなら、行きたくなかったけど、高校も行くと。
青木:そんな感じです。
木田:探検部というものを意識したのはいつなんですか?
青木:いつだったんだろう、そのあたり曖昧ですけど、中学の時は、高校行かないって言ってたのが植村直己さんを知って、大学に行けばそういう楽しい、パラダイスが待ってると思っていたくらいなので…。どっかのタイミングで父親から、農大の探検部が面白いっていう話を聞いたんですよね。高校時代だったかもしれないです。
木田:なるほど。行くなら農大の探検部。
青木:そうそう、山岳部じゃないなと思ったんですよ、山だけじゃないなと。植村さんは、明大の山岳部でヒマヤラに行くというのがひとつの目標だったんですけど、そこから冒険家になってアマゾン行ったり、グリーンランド行ったり、北極行ったりしたんですよね。どっちかというとその後半の方に、山だけじゃないない方に憧れていたので、山岳部ではなく探検部がいいなと。
農学部林学科に補欠の補欠で入学…
木田:林学科にしたのはどうしてですか?
青木:どうせ大学行くんだったら自然に関わる学部がいいなと思って、農大の農学部林学科、もしくは造園学科かなと思ったんです。地方試験も含めて、林学科と造園学科が受けられるものは全部受けました。
木田:うん。
青木:そうしたら全部落ちて…。かろうじて林学科だけ補欠に残りました。
補欠合格者には後日連絡があって、そこで初めて正式な合格となる。青木にその連絡があったのは、期間の最終日。しかも夜。
木田:ほ〜
青木:補欠合格の連絡が何日から何日にありますと知らされていて、待ってたんだけど、最終日、日が暮れました、あ〜、来なかったみたいな、しょうがないねみたいな、どうするみたいな、どうするも全然考えてなかったんですけど…。そうしたら夜の8時か9時くらい、電話がかかってきて、補欠ですけどどうしますか? と。
木田:お〜。
青木:もちろん、行きます(笑)
木田:なんでそんな夜になったんでしょう?
青木:多分、ほんともう最後の最後だったんじゃないですか。補欠連絡して、いや行きません、なんて人もいたりして…
木田:定員足りないから…
青木:そうそう。だから補欠の中でも補欠。 多分(笑)
木田:誰か行くって言った人が先にいたら…
青木:いたら入学できなかった。
木田:すごいですね。ちなみに農大だけを受けたんですか?
青木:いや、その、なんていうんですか、滑り止めではなくて、練習で…
木田:受験の練習(笑)
青木:試験に慣れようということで、地元の千葉の大学を受けました。1校か2校。あとは農大だけでした。
木田:それは私立大学?
青木:私立大学です。全然行く気はなかったんです。どこの学科を受けたかすら覚えてない。
木田:受かったんですか、そこ?
青木:確か受かったんだと思います。
木田:そこに行ってたかもしれない。
青木:いや、多分行かなかったんじゃないかな、もし、農大落ちてても…。分かんないですけど、モチベーションとしては全然行くつもりのないところでしたから。
木田:すごいな…。ちなみに受験勉強は?
青木:一応、夏期講習とか、行ってたんですよ。行ってたけど、基本的には、農大の過去問をめちゃくちゃやってた感じですね。
木田:なるほど。
青木:そしたら、過去問が意外と出るんですよね。
木田:う〜ん。
青木:ラッキーみたいな。
木田:それで農大に入って探検部に入部すると。
第一話「山仕事やってるせいか、なんか違和感あるんですよね。家にいるのが」
〈つづきます〉
TEXT:木田 正人 PHOTO:木田 正人