母方の実家がある岩手県久慈市で過ごした夏休み。寝台列車に乗って向かったそこは、海も川もまるで別世界。大阪の川や田んぼといった”日常”とは違う種類の自然を体感したひとときだった…
寝台列車に乗る、二段ベッドに乗る。そして、非日常の世界へ
青木:向こうの川は綺麗でした。とくに海が綺麗だったんで、すごい、いいなーと。あと、当時ね、田んぼにホタルがすごい出てたんですよ。
木田:ホタルですか…
青木:でもあれ、夏休みだったのかな…。東北のホタルは夏に、7月後半とかなのかな。
木田:どうでしょう。
青木:でも、ホタルが出てたんですね。ホタルが田んぼを埋め尽くすみたいな。
木田:へ〜、すごいですね。
青木:そうです。すごかったんですよ。あ、いま、チラッと調べたら、八戸でヒメボタルが7月中旬に見頃と出てます。
木田:じゃ、夏休みですね。
青木:そういうのを見て、驚いたり。そのころから自然の中で遊ぶのが好きでした。
木田:大阪と岩手、どっちが好きでした?
青木:どうですかね。岩手は好きでしたね、非日常だったので。
木田:非日常…
青木:当時は移動するのも寝台列車だったりするんですよ。大阪から、乗り継いだのか、1本で行けたのか忘れちゃいましたけど、寝台列車に乗る、二段ベットに乗る、あのワクワク感、あれは楽しかったですね。だんだん田舎に行くみたいな。
木田:非日常の世界にだんだん行く。
青木:そう、そう。だって、普通に考えたら、電車の中で夜が空けてとか。
木田:普通ないですね。
青木:ですねよね。あれはおもしろかった。
木田:夜が明けると全く違う世界。
青木:そう、そう。小学生のころはそんなことばかりやってましたね。ちょうどファミコンが出た世代だったので、友達の家でやったり、もちろんそういうのもありましたけど、岩手は非日常だから、滅多にないから、頭に残ってます。その楽しさとか。
木田:なるほど。
青木:そうだ、大阪の中で1回引っ越してるんですよ。
木田:そうなんですか…
青木:生まれてから幼稚園までは此花区西九条というところにいて、小学校からは茨木市。大阪の中でも田舎なんです、郊外というか。だから、田んぼがあったり、池があったりしたんですね。
映画「植村直己物語」と出会う
木田:小学校時代をそう過ごしてきて、どっかであの映画を見るんですよね。
青木:そうそう。ふふ。どのタイミングかは忘れちゃいましたけど、中学生だったと思うんです、「植村直己物語」。
木田:テレビで見たんですよね。
青木:テレビだったですね。
木田:80年代ですよね。
青木:そうです。だから、リアルに植村直己さんが騒がれていたことは知らないんですよ。
木田:なるほど。僕は、小学校のころでしたね、植村直己は。
青木:じゃ、騒がれてたときを知ってるんですか?
木田:すごい熱中してみてたわけじゃないですけど、北極縦断とか、グリーンランドとか、テレビで見てましたよ。
青木:へ〜
木田:外国の旅物が好きだったんですよ、「キャラバンⅡ」って知ってます?
青木:知らないです。
木田:TBS系の番組で、情報番組的なものの中に、10分くらいだったかな、コーナーがあって、外国を旅する。いろんなとこに行ってるんですよ、アフリカとか。
青木:それ誰が行ってるんですか? タレントとか?
木田:全然覚えてないけど、1年とかかけて行ってるんです。で、ケニアから地中海まで行くとか、何かしら行程があって、パジェロ的なクルマで行くんですよ、それを毎朝少しづつ見る。
青木:朝、やってるんですか。
木田:朝。学校行く前。
青木:へ〜。
木田:それを毎朝見てたんです。で、何かの懸賞に応募してTシャツが当たったこともあった。
青木:そうなんですか。
木田:胸に「キャラバンⅡ」のマークがついている…
青木:昔からそういうの好きだったんですね。
木田:好きでした。というか、それで好きになったかもしれない。めっちゃ面白かった。
青木:いまでいう、「水曜どうでしょう」的な…
木田:あ〜、う〜ん…、ちょっと違うかも。でも、何人かでクルマで旅をするんですよ。ま、それはそうと、植村直己…
青木:そうですね。
木田:植村さんは迫力が半端なかった! 髭も凍ってたり、顔の色もすごかった。
青木:ナショジオの写真なんか、日焼けして皮がズルムケみたいなね。
木田:これはやだなって思った。
青木:ははは。まじすか。子どもにも。
木田:「キャラバンⅡ」とは違った 笑
青木:そうですね。で、そうそう、植村直己物語を見て、当時、本物のリアル植村を知らなかったんで、僕は当時は西田敏行が本物だと思ってたんですよ、わー、すげー人がいるなって。
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〈つづきます〉
TEXT:木田 正人 PHOTO:木田 正人