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インタビュー 2023.12.29

TEXT:木田 正人  PHOTO:木田 正人

山の中に図書館オープン。ゆったりできる場所にしたい

高野優海さんのプロフィールを見る

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今年2月に続き、2回目の登場となる高野優海さん。 昨年8月に地域おこし協力隊・隊員として檜原村に着任以降、村での暮らしをつづるnoteを立ち上げるなど、村を積極的に発信してきました。 10月、山の中の古民家を再生した施設の一角に、私設図書館「蔵書室・とうげ」をオープン。 「とうげ」はどんな場所になっていくのでしょうか。

ここで本が読めたら最高!

檜原村のメジャー観光スポット「払沢の滝」から坂道を登って集落(時坂)を抜けた先。浅間嶺に向かう登山道に入ってすぐの場所に「蔵書室・とうげ」があります。

木田:やはり、歩いてる人、多いですね。

高野:そうですね、結構、話し声が聞こえてきますよね。

木田:オープンまではどんな感じだったんですか?

高野:ここ(※1)に本がある空間があるといいな、みたいなことを由佳さん(※2)と話してたんですよ。

※1 登山道沿いにあった「蕎麦処みちこ」の跡を活用した古民家「紬(つむぎ)」

※2 渡部由佳さん。古民家「紬」のオーナー。「とうげ」はその一角にある

木田:いつごろの話ですか?

高野:5月くらいですかね。でも、そのときは構想だけで、着手したのは7月です。8月に紬でウェブマガジン「greenz.jp」さんとの共催イベントをやるという話があって、そこに間に合わせようと急ピッチで作業を進めました。

木田:由佳さんとは以前から親しかったんですか?

高野:私が前にいた非電化工房で同期弟子だった子のお母さんが、由佳さんと知り合いだったんです。それで私が檜原村へ移住するとなったとき、由佳さんを繋いでくれたんです。

木田:偶然とはいえ、面白いですね。

高野:なので移住して割とすぐに、由佳さんとは会っていました。それで話してみたら趣味がとても合って、仲良くさせてもらっています。その後、由佳さんがこの古民家を手に入れて、紬を作って…。その流れの中で、紬の敷地内にある、使われていない小屋もうまく活用できないか?という話が出ました。

木田:なるほど。前回のインタビューでお話ししてた、人が集まれる場所になればいいなと。

高野:そうですね…ただ、人が集まれる場というよりも、私も由佳さんも本が好きだったので、それとは別の文脈で、まずはここで本が読めたら最高じゃない? という話になって。私にはもともと古本屋をやってみたいという夢があったので、そっちと繋がった感じです。

山の中の図書館

木田:古本屋、いいですね。

高野:大きすぎないスペースだからこそ、チャレンジしやすかったですね。

木田:今、何冊あるんですか?

高野:ざっと数えてみただけでも、500冊くらいはあると思います。

木田:ところで、今日オープンということですが、グリーンズさんのイベントのときも開けてたんですよね?

高野:はい。その日は泊まっていく方もいて、夜まで多くの方が紬で時間を過ごしていました。話をしたい方は紬の母屋で話し、1人静かに本読みたい方はこちらで本を読む。空間が分かれることで、いろいろな時間の過ごし方をしてもらえたんじゃないかと思います。意外と子どもたちがここで遊んだり、絵本や漫画読んだりしてくれました。

木田:どんなジャンルがあるんですか?

高野:由佳さんと私が持ってきた本が半分を占めていて、由佳さんは自然や教育、私は思想、哲学、あと、詩集。寄贈いただいた本には小説が多いですね。

木田:どんな方が寄贈されてるんですか?

高野:由佳さんの知り合いで紬に来てくださった方や、村民の方々などからいただきました。今後は、村内で古本回収をするのもいいかなと思っています。

木田:このジャンルがほしいというのはありますか?

高野:強いて言えば漫画でしょうか。この場所は、こもって本が読みたくなりますよね。

山の中で本が読みたい方へ

木田:主な利用者はどうなりそうですか?

高野:あまりキャパシティが大きくないので、まずは知り合いや、知り合いの知り合いに広げていけたらいいなと思っています。あとは登山に来た方や、サイクリストの方々。そういう方々が自然を楽しむだけでなく、私のような檜原に住んでいる人と話して、接点を持てる場所になったらいいなと思ってます。

高野:あと、山の中で本を読みたいという物好きな人も!

木田:めっちゃ不便だけど、あそこの本屋いいよね、みたいな。

高野:そうなんです。1日1組限定で宿泊できるような形で、泊まれる蔵書室にしたいとも考えています。

木田:泊まれる本屋、いいですね。

高野:しかも山奥で。

木田:泊まれて星空観察できる本屋。

高野:すごくいいですね(笑)。

木田:どんな方が寄贈されてるんですか?

木田:あとはどんな本を置くかじゃないですか?

高野:たしかに、選書で興味を惹くのも大切ですよね。

木田:最初はみんなが持ち寄るものでいいと思うんですけど、、

高野:個人的にはやっぱり、もっと漫画を増やしたいですね。。

木田:山の中でゆっくり漫画が読める場所…

高野:山の中の漫画喫茶。すでに「バガボンド」や「海獣の子ども」、「風の谷のナウシカ」などは揃っています。

木田:販売も考えてるんですか?

高野:そうですね。今、古物商の申請書類を準備しているのですが、でもやっぱり、ここは読む方をメインにしたいですね。

高野:本にまつわることで生計を立てるイメージがあまりないんです。自分の名刺代わりというか、「山の中で図書館、本屋をやってます」ということにシンパシーを感じる人と仲良くなれたらいいな、という感覚でやっていけたらと思っています。

そういう社会資本、関係資本、精神資本、自分の喜びみたいなものを得るナリワイにできればと。。

木田:さっきの自転車の人たちのように、ちょっとここで話すことでファンになっていくと思うんです。で、徐々にあそこいいよと広がっていく感じ。

高野:いいですね〜。

木田:本の中身という話をしましたが、ここで高野さんと話すことが一番になるかもしれないですね。

高野:そうですよね、やっぱり人ですよね。

木田:たぶん混みすぎることはないと思うので、1人ずつとゆっくり話せるんじゃないですか。

高野:そうですね。

木田:あとコーヒーもほしいですね。

高野:まだ飲食業の営業許可がないので、現状はセルフサービスではありますが、すでにコーヒーや紅茶、野草茶などは楽しんでいただけるようになっています。

木田:村のファンづくりになりますね。

高野:確かに。前に昔から村に住んでいる村民の方から「高野さん、『蕎麦処みちこ』だったところで何かやってるの?」と聞かれて、「そうなんです」と答えたら、「あそこは本当に歴史のあるところだから、ぜひ大切に維持・管理してほしい」と言われたことがあるんです。

木田:みちこが閉店になって誰も入れなかったら閉ざされていくばかり。

高野:人の出入りがないと、家屋はどんどん傷んでいってしまいますしね。

木田:使ってることで維持していけると。村の歴史の保存というか…そうなったらいいなと思います。

まずは、ゆっくり本が読める場にしたい

木田:冬は寒いですよね。

高野:そうですね。由佳さんが灯油ストーブを導入してくれたので、小屋の中は温かいとは思うのですが、冬は日も短くなるので、オープンの頻度は少し減らそうかなと考えています。

木田:SNSなどはやっているんですか?

高野:Instagramをやっています。よければフォローお願いします(笑)。

※こちらです!→ 蔵書室「とうげ」

木田:どんな場所になるんでしょうね。

高野:まずは、ゆったりできる場所にしたいと思っています。都会だと本を読むにも、長居すると罪悪感があったり、隣の人との距離が近すぎたりと、落ち着ける場所が少ないと思うんです。もちろん本を読まなくても、自然を見るだけでもいいし、時の流れを忘れられるような場所になったらいいなと思います。

木田:確かに、座ってコーヒー飲んで外を見てるだけでもいい。

高野:そうですね。

木田:第一歩を踏み出した感じですね。

高野:とにかく、挑戦できる場所があることが大きかったので、由佳さんには本当に感謝しています。


今後は村内の他の地区でも、村内・村外の人が交わる場の運営に関わることになりそうと話す高野さん。村の内と外をつなぐ架け橋のような存在と言えそうだ。

TEXT:木田 正人  PHOTO:木田 正人

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