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インタビュー 2023.03.5

TEXT:木田 正人  PHOTO:木田 正人

森では、ぼうっとして本を読んだり、コーヒーを飲んでるだけで、今日1日、いい日だったなって…

片岡洋さんのプロフィールを見る

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神奈川県横浜市出身。ゲームメーカーに勤務し、多くの製品の開発に携わったという片岡さん。キャンプには行ってたそうですが、ここ数年、それまでとはちょっと変わった形で森に来る機会が増えたようで…。このお話も、会員になっている“森のサブスク”MOKKI NO MORIの薪づくりのイベントの合間に伺いました。

木田:いまお住まいはどちらですか?

片岡:東京の大田区です。出身は横浜ですが、それから羽田に引っ越して…。その後、多摩川沿いにどんどん上流に引っ越してきてる状況です。

木田:だんだん、森に近づいてきてるんでしょうが、まだ大田区(笑)。

片岡:檜原まではまだ結構かかりそうです(笑)。

木田:川、好きなんですか?

片岡:好きなんですよ。

木田:何が好きなんですか?

片岡:広いですよね、空が。それに公園と違って比較的自由なところがあって…。

ちなみに片岡さんは昨年末行った「秋川〜多摩川ジャーニー」に参加。多摩川を遡り(歩いて)、森を目指した。

木田:川や自然との出会いは?

片岡:小学生の頃、丹沢だったと思いますが、父親の釣りについて行って、川で焚き火をしたり、石ころで遊んだりしてました。それがすごい楽しかった思いがあります。何時間でもいられたんです。石の間を流れてる水が綺麗でした。

木田:中学、高校の頃は?

片岡:そういうのは全然なかったですね。吹奏楽で音楽をずっとやってました。

二十歳の頃〜僕らの世代はコンピューターが自分で買えるようになった最初の世代〜

木田:毎回、皆さんに聞いてるんですが、二十歳の頃どうされてました?

片岡:僕らの世代はコンピューターが自分で買えるようになった最初の世代なんですよ。それまでは個人が買うなんて考えられなかった。いまは当たり前なんですけど、初めて買った時はものすごく興奮しました。

木田:どんなふうに使ってたんですか?

片岡:それが、買っても何もやることないんですよ。インターネットもないし、ソフトウエアもないし…。そうすると、自分で作るとかしかないんです、ゲームとか。それがめちゃくちゃ楽しかったです。

木田:Windowsより前ですよね?

片岡:もっと前です。雑誌を買ってきて、雑誌に載ってるプログラムを目で見て写すとかやってました。 あと、音楽だったらちょうどYMOが出てきた時で、コンピューターで音楽ができるって、無茶苦茶興奮しました。そういう世代なんですよ。

木田:いま、こうして森にいますけど、ここにつながるきっかけは何かあったりしたんですか?

片岡:夏休みに大学の友達とキャンプ行ったりしてました。丹沢ですね。もう酒を飲みに行くんですよ。で、川原で焚き火して遊んでました。

キャンプ場でないところ、静かなところでキャンプしたいなと思ってたんです。

片岡::山の中に入って行ってキャンプするって憧れてたんです。自分で荷物担いで、キャンプ場でないところ、静かなところでキャンプしたいなと思ってたんです。でもどうしたらいいか分からなかった。

木田:そこにMOKKIの案内があり、入会したということですね。

片岡そうです。

木田:MOKKIの魅力は?

片岡:元々は静かな山の中でキャンプしたいということでしたが、入ってみて、今日もそうですけど、みんなで薪割ったり、トイレ作ったり、そういう活動を一緒にするのが楽しいんだなと思ってます。

木田:どのくらいの頻度で来てるんですか?

片岡:多い時は月に3回くらい。タイミングが合えば家族と一緒に来てます。キャンプすることそんなになくて、昼間にきて、こうやって皆さんと会って、ご飯食べて帰ることが多いです。

木田:山で仲間がいて、というのが楽しいんですね。

片岡:そうですね。初めは意識してなかったことですけど…

片岡さんがこの森に来ることになったきっかけが東京美林倶楽部への入会だ(2019年)。東京美林倶楽部は、木を伐り出した後の場所に、1人3本の苗木を植え、その後30年の時間をかけて木を育て、森を育てるという会員制プロジェクト。森で過ごす時間を楽しむことが大きな魅力になっている。

片岡:そもそも何で入会したのか、これが覚えてないんですよね…。自分で木を植えたいというより、その活動がおもしろいなと。入会金を払うことで、山の保全だとか、山が整備されるということに共感しました。

木田:美林から数えたら4年。ずっとこの森に来てますね。

片岡:そうなんですよね…

木田:森の良さは何でしょう?

片岡:何でしょうね、これは、難しい…。

木田:難しいですよね…

片岡:ここだったらぼうっとしてても、今日1日何にもしなかったな、無駄な1日だったなと思わないんですよね。それがなぜかは説明が難しいですけど、ぼうっとして本を読んだり、コーヒーを飲んでるだけでも、今日はいい日だったなって…

木田:本読むだけなら家にいてもよかったかもしれない…

片岡:そうなんですよ、でも、家で本読んでコーヒー飲んでも今日1日いい日だったなとなかなか思えない。人と会うのもそうかも。木のこと教えてもらったり、山のこと教えてもらったり。これまでは、いっぱい木が生えてるなと思ってたくらいなのが、ここは植林してる、ここは違うな、尾根筋だから違う木が生えてるなとか、いろいろ見えてきました。

木田:そうなるとおもしろいですね。

片岡:焚き火する時も、これは針葉樹だとか、広葉樹だとか…。燃え方とか違うし、知るとおもしろいです。これも1人だと学べないけど、教えてくれる人がいて。いい環境だと思います。


2枚目の写真は、同じくMOKKI NO MORI会員の筒井宏典(1月15日号登場)さん提供です。

TEXT:木田 正人  PHOTO:木田 正人

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