神奈川県横浜市出身・在住。大学院で建築情報学を専攻。MR技術を生かして、1本の木から建築をつくることを試行。「誰でも気軽に立ち入ることができ、生態系をリスペクトしながら資源を生かし、循環させられる森」ができることを夢見ている。好きな木はホオノキ。修士研究の実験のため、気づいたら森に何度も通っていたという石渡さんに、ふわりとした風の中でお話を伺いました。
森ってこれまでそんなに行ったことがなかったんです。
木田:風の音、いいですね。
石渡:うん、うん。
木田:あとでこの録音した音声を聞いた時、風とか周りの音が聞こえてくると、あ、こんな感じのインタビューだったな〜、こんな感じの日だったな〜とか思い出せていいんですよ。
石渡:ふん、ふん。
木田:そういう感じって、書く文章に何かこう、ちょっと影響を与えるように思うんです。言葉を選ぶときとか…。
石渡:うん、うん。
木田:ということで、始めます。修士研究はお疲れ様でした。結構、山に来ましたね?
石渡:はい。そうですね〜。
木田:何回くらい来ました?
石渡:え〜と、5回か、6回か…
木田:2か月くらいの間ですかね、短い期間に集中して…
石渡:そうなんです。私、それこそ、森ってこれまでそんなに行ったことがなかったんです。
木田:あ、そうなんだ。
石渡:そうなんですよ。
木田:遠いもんね。
石渡:ええ。
風をたくさん浴びれる場所へ
木田:よく行く好きな場所とかあるんですか?
石渡:場所ですか、場所はいろいろだな。う〜ん、場所、場所…場所ではないですけど、散歩するのが好きで、いろんなところをただただ歩き回るのが好きなんです。散歩してるときに風をたくさん浴びれる場所というか、風通しのいい場所が好きです。
木田:へぇ〜。
石渡:あとはぼうっとしたいなというときは、これまでは水辺の方が身近だったので、水辺に行って、川とか水辺。後は美術館行くの好きなので、場所としては美術館。カフェとか。森は生活圏から離れていたのでこれまであまり行く機会はなかったんですけど、研究なんかで何回か来てるうちに、すごい空気が綺麗だなとか思って、感動というか、それはありました。
木田:空気を感じる。
石渡:はい。
木田:風通しの良い場所が好き、ということは、いまここ風通しいいじゃない。こんな感じですか?
石渡:まさに。
木田:いいよね。風は。散歩は昼間ですか?
石渡:そうですね。昼間が多いかな。たまに暑いのに、この間も暑いのに1時間くらい散歩しちゃって、汗だっらだらでカフェ入って、店員さんにびっくりされちゃって。暑くてもやっちゃう。結構、時間とか気温とか関係ないかもしれない。
木田:家の周りですか?
石渡:そうですね。家の周り。行きたいところがあれば1時間くらいなら歩いて行くか、みたいなところがあります。
木田:なかなかですね。
石渡:ふふふ。1時間歩くっていうと、あんま付き合ってくれる人いないです。えー、そんなに歩くの、みたいな。
風が先に秋になる、その瞬間が好き
木田:ところで、好きな季節はありますか?
石渡:秋が始まるとき。なんか、何て言えばいいんだろう。まだちょっと暑いんだけど、風が先に秋になるってありません?
木田:ある(笑)
石渡:あの瞬間がすごく好きで。
木田:朝起きて玄関出たときに風が違うってありますね。
石渡:散歩して風を浴びるのが好きっていったと思うんですけど、そういう時期に散歩してるときにフワッと吹いた風が、あ、秋の風だっていうがすごい好きです。
木田:秋の風ってありますね。今日から秋だって。ずっと昔からその感覚持ってました。
石渡:秋来るな〜って。
木田:そう、風が違う。秋だよね、そういうの。
石渡:秋です。春もあるけど、春も嫌いじゃないけど、なんかそうですね、一番強いのは秋かもしれない。
木田:秋は感じる。いいですね。
石渡:私も初めてほかの人で、そうっていってくれる人に会いました。いつも、へ〜くらいしか言われないんで。そうなんだみたいな(笑)
木田:この感覚、初めて通じた(笑)
石渡:いいですよね、あれ。
木田:秋特有。
石渡:うん、うん。
木田:風、変わるよね。
石渡:風から。
木田:空気が変わる。
石渡:夏の朝とかどうですか? 5時とか。寝てるな〜、はは、寝てるな〜、絶対気持ちいいんだろうな〜って思いながら。
木田:めっちゃ暑い日でも涼しいんだよね。朝日がちょっと昇った頃くらいで、風が吹くと涼しかったりする、暑い夏なんだけど。
石渡:気持ち良さそうだな。それを最後に味わったのは10年以上かもしれないです。キャンプした時とか。
木田:ラジオ体操とかやったことある?
石渡:あります。
木田:あの感じ。
石渡:あ〜、確かに涼しかったかも。いや〜、味わってないな〜、寝てるな〜。
木田:寝てる。
石渡:もったいないですよね。起きれない。
木田:起きれないタイプなんだ…
石渡:はい。ははは。こんな嬉々としてはいっていってる人あまりいないと思うんですけど。
森に来て、霧と雨の境目を体感
木田:でも、風を感じる。
石渡:風が好きです。
木田:いいですね、風。風はいいよ、ほんとに。山にいると、風は天気の変わり目だったたりして。空気が変わって風が吹くと雨が降る…
石渡:あ〜。
木田:そういう感覚が好きなんです。
石渡:ふふふ。研究でこっちに来てたときに一回、霧と雨の境目を初めて体感したんです。結構あれは感動したんですけど、そういうのってあんまり普段知れないから。
木田:霧と雨の境目。
石渡:最初は霧。靄がだんだん重みを持って行って、雨になったというか…。ちょうどその変化の過程を見ました(笑)
木田:空気、重いときありますね。見えないものを感じる?
石渡:たしかに。その自覚はあります。
木田:風を操る?
石渡:操ってはないです(笑)
木田:独特ですね。
石渡:はい。よく言われるし、ま、そうなのかなと最近ちょっと思い始めました(笑)
木田:面白い
石渡:変な人だと思います
木田:それは気づかなかった(笑)
石渡:うふふ。いつもは出来るだけ、隠せてるか分からないですけど、隠してるので(笑)
〈つづきます〉
TEXT:木田 正人 PHOTO:木田 正人